2020年11月9日月曜日

Japan Chess Championship 2020 Round 7

3.0/6.0pで最終日を迎えました。大会中の真鍋さんの棋譜を見ると、1.d4を指す緩急自在のプレイヤーという印象を受けました。目標の4.0pを目指し、激しいオープニングを選択します。

Manabe, H (JPN, 2039) - Tokuni, S (JPN, 1800)
Japan Chess Championship 2020 (7)


1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. Nc3 d5 4. cxd5 Nxd5 5. e4 Nxc3 6. bxc3 Bg7 7. Bc4 c5 [Grunfeld Spassky variationです。白はビショップを展開し、味よくd4を固めます。]
8.Ne2 Nc6 9. Be3 O-O 10. O-O Bg4 11. f3 Bd7 12. Qd2 Qa5 13. d5? Ne5 14. Bb3 Bb5!


11...Qc7 もあるところで、今回はf3を突かせる11...Bd7を選択しました。白の12手目もいろいろな選択肢があるところで、12.Qd2と指されました。12...Qa5に対して13.d5が少し違和感のある手で、13.Rfd1や13.Qb2を予想していました。
本譜は追いにくい位置にビショップが展開できてプランもわかりやすく、早速リードを意識しました。

15. Rab1 b6 16. Rfc1 Nc4 17. Bxc4 Bxc4 18. Rc2 Rad8 19. Nc1


白のクイーンサイドは柔軟性に欠けており、黒が強力なpositional advantageを持っています。ナイトがe2からc1に行ったことで第一感は19...f4でしたが、防御力を失って紛れを生む可能性があることや、a5のクイーンが取り残される恐れがあるため、焦らずじっくり勝負することにします。

19...e6! 20. Nb3 Qa6 21.d6 Bd3 22. c4 Bxc2 23. Qxc2 Rxd6 24. Bg5 Bd4+ [f7-f6を突く前に、ビショップを強力なd4のアウトポストに展開させます。] 
25. Nxd4 Rxd4 26. Rc1

ビショップ・ルークの交換のうえ、ワンポーンアップで黒大優勢です。
ここで26...f6を考えましたが、27.Bh6 Rfd8 28.e5 のような手が少し気になりました。また、26...e5は、h6とf6の黒マスに弱点を生みます。
白に絶対に許してはならないのは、h6とf6のマスにビショップとクイーンを配置されること。本譜は白の希望をひとつひとつ打ち砕く手を意識しました。

26...Qa3! 27. h4 [バックランクメイトを防ぎ、hファイルにプレッシャーをかける手ですが、h5にビショップを動かすことができなくなりました。]
27...f6 28. Bh6 Rfd8 29. Rf1 Qb4 30. Qc1 e5


この手で勝ちを確信しました。白はe4-e5と突くことができないため、クイーンやルークを黒の陣地に侵略させることが不可能になりました。

31. f4 Rxc4 32. Qe3 Rxe4 33. Qh3 Kf7 [33...Re1?? 34Qe6+ でメイトです。最後まで油断してはいけません。] 34.fxe5 Qd4+ 35. Kh1 Rxh4 36. Rxf6+ Kg8 0-1


終始リードを奪う会心の指し回しができました。帰りの道中に解析もしましたが、僕の指し手に特段の悪手はないようでした。
3連敗1強制byeからの3連勝。目標としていた4.0pを取ることができ、全日本選手権の集大成となりました。byeのときに気分転換できていたのも、いい結果に結びついたと思います。

いくつかの地区予選が中止になり、事前にNCSから選手権の参加希望状況の照会メールが送られてくるなど、不安視されている中での選手権でした。しかし、こうして無事に開催され、日本トッププレイヤーの方々のゲームを生で見ることができたのは、僕の中で貴重な体験になりました。
大会を円滑に運営してくださったNCSのみなさん、アービターのみなさんに心から感謝いたします。


入賞者のみなさん、おめでとうございます。
僕もいつかこの場所に立てるように頑張ります。


2020年11月6日金曜日

Japan Chess Championship 2020 Round 3

連敗スタートを喫して迎えた2日目。ここを負けると選手権前に目標としていた4.0/7.0pが早くも絶望的になるので、何とか結果を出したいところです。

しかし、全日本の壁や関東の層の厚さ、自分の弱さを突き付けられる結果となりました。

Tokuni, S (JPN, 1800) - Furuya, M (JPN, 1959)
Japan Chess Championship 2020 (3)

1. g3 Nf6 2. Bg2 d5 3. Nf3 c6 4. c4 e6

5. O-O Nbd7 6. b3 e5!? 


Neo-Catalan に対して Semi-Slavの形からe6-e5と突かれました。eポーンを2手かけて動かすのは実戦心理的に指しにくいかと思いましたが、ナイトにプレッシャーをかけて十分ある手です。ここですでに実戦経験はなく、できるだけ自然に指そうと思っていました。
しかし……。

7. d4 e4 8. Ne5 Bd6


9. Bb2? [構想力のなさが露呈したillogicalな手です。黒はこのビショップを働かせないようにdポーンを固定させておけば十分です。代えて白は9.f4でナイトを支えるか、7手目に戻って7.cxd5や7.d3と指すのがよかったでしょう。] 

9...O-O 10. e3 Re8 11. Nxd7 Bxd7 12. h3 Be6!


これまで漫然と組んでおり、恥ずかしながらここで全てに気づいて愕然としました。黒の2枚のビショップが白キングを直射しています。さらにQd8-d7,h7-h5-h4やNf6-h5, g7-g5といった、キングサイドにプレッシャーをかける手があり、黒が大優勢です。
一方で白のポジションはいいところが全くありません。それどころか、僕は前述の攻めを全部食らってしまいました。

13. Qe2 Qd7 14. Kh2 h5 15. cxd5 cxd5 16. Ba3 Bc7

17. Nc3 h4 18. Qb5 Rad8 19. Qxd7 Rxd7 20. Ne2 Nh5

21. Rac1 g5 22. Rc2


クイーンを交換したことで攻撃力を削り、少し持ち直したかと思っていました。
22...Rc8?のような手では、Rfc1-Bd6!のような構想が受からなくなります。

22...Bb8! [この柔らかい手は全く見えていませんでした。]

23. f4?! [暴発です。cファイルから攻め込むのは無理だと考え(23.Rfc1 Rdd8)、ポーンを捨ててでもf1ルークを縦に使うのがいいとは思っていましたが、Rfc1からBa3-b4-e1と土下座するのがまだよかったようです。]

ここからは白にチャンスは全くありません。古谷さんは隙がなく強かったです。

23...exf3 24. Bxf3 Nxg3

25. Nxg3 Bxg3+ 26. Kg2 Rdd8 27. Rc5 a6 28. Ra5 Bc7

29. Rc5 Bd6 30. Ra5 Bxa3 31. Rxa3 Rc8 32. Ra5 Red8

33. Rf2 Rc3 34. Re2 Kf8 35. Rc5 Rc8 36. Rxc8+ Rxc8

37. e4 dxe4 38. Rxe4 Bd5 39. Re2 Bxf3+ 40. Kxf3 Rc3+

41. Kg4 f6 42. Re6 Kf7 43. Rb6 Kg6 44. d5 Rg3#


メイトまで指しましたが、黒が終始優勢を維持する指し回しが光りました。このラウンドの結果、僕は3Rを終えて0-3、34人中34位です。オープニングからロジカルに完封されたこともあり、さすがに落ち込みました。

[Round 4]

対局相手になりそうな方がここでbyeを宣言し、強制byeで1.0ポイントを得ました。空いた時間をどうしようか迷いましたが、上京したら行ってみたいと思っていた新宿御苑を訪れてみることにしました。


「言の葉の庭」聖地のベンチに座っていると、体の中にエネルギーが沸いてきました。
このbyeでの過ごし方で気持ちが切り替わったと思います。

閉園後は会場に戻って上位ボードのエンドゲームを観戦し、その後にチェスyoutuberの北陸さんとオフ会。深夜はチェスの勉強をせずに「言の葉の庭」を観ていました。

(実は「言の葉の庭」に出てくる雪野が作中で飲んでいるように僕も金麦を飲みながら映画を観賞し、お酒の弱い僕は350ml飲んだだけで、もどしてしまったり二日酔いしたりしたのですが)翌日は精神的に終始リラックスでき、2連勝することができました。予備のメガネをかけてゲン担ぎをしたのもよかったかもしれません。

3日目6Rの自戦記は2つ前の記事をご覧ください。


3.0/6.0pで4日目の最終7Rを迎えます。

2020年11月4日水曜日

Japan Chess Championship 2020 Round 1

初日1局目のゲームを振り返ります。相手は強豪の東野さんで、何度かオンラインでも当たり、負かされています。調べてみると東野さんは東大将棋部のOB。東大将棋といえば歴史的に「力戦」が有名で、チェスにおいても腕力勝負になりやすいフィアンケット形になると予想していました。

なお、事前に僕のことは「将棋の人でしょ。知ってるよ」と言っていたそうです。完全に無名だと思っていたので、いろんなプレイヤーにちらほら知られていたのは意外でした。将棋出身者、予想以上に多いのですね。

Higashino, T (JPN, 2070) - Tokuni, S (JPN, 1800)
Japan Chess Championship 2020 (1)

1. Nf3 g6 2. g3 Bg7 3. d4 Nf6 4. Bg2 O-O 5. c4 d5 6. O-O c6 7. Qb3 Qb6 8. Nc3


ここまでは予想通りの展開です。普段であれば6...dxc4と指していたところですが、前日に読み直したGrunfeld本にこのストラクチャーが書かれていたので、飛び込んでみました。しかし、研究不足が祟り、早くもあっけなく崩れてしまいます。

8...dxc4? [局後、強いプレイヤーに棋譜添削を依頼し、この手を一瞥してセンターを弱体化させる悪手だと言われました。対局中は手順にビショップが展開できて指しやすさを感じていたのですが、解析にかけるとここで白に傾いていました。ここでは8...Rd8や8...Bf5がセンターをキープして自然な展開です。] 

9. Qxc4 Be6 10. Qa4 Rd8 11. e4 Na6 12. Qc2 Bc4 13. Rd1 Nb4 14. Qb1 c5 15. d5 e6 16. a3 Na6 17. Bg5


とは言いながらも、直感的にここはまだ食いついていると思っていました。しかしながら、直感が正しくても正着が見つけ出せないのはよくあることですね。

17...h6?! [前述の強豪に、この手はないと断言されました。実質ここでこのチェスは負けたようなものです。 帰って調べてみると、17...Bb3のほうがもう少し粘る変化がありました。g5ビショップとd8ルークの交換になり、エクスチェンジ・ダウンはするのですが、代償にdファイルのパスポーンを持ち粘っていきます。白はb1のクイーンとa1のルークをほぐす方法に少し悩みそうです。]

18. Bxf6 Bxf6 19. e5 Bg7 20. d6 Nb8? 21. Qe4 Ba6 22. b4!

黒は抑え込まれたというか、自分から退却していき、全くセンスがありません。
右辺のマイナーピースを活用する手のほうが、白にとって明らかに脅威だったはずです。(Bc4-b3, c5-c4, Na6-c5など)

無駄に時間も消費しており、いくばくもなく白に完封されるのを甘受するばかりです。
22...Qc6 23. Qxc6 bxc6 24. bxc5 Nd7 25. Rac1 Nxc5 26. Na2 Be2 27. Re1 Bxf3 28. Rxc5 Bd5 29. Nb4 Rac8 30. f4 f6 31. Nxc6 fxe5 32. Ne7+ 1-0


不本意ではありますが、地方にいてオンラインで時間の短いゲームばかりやっている以上、構想力や粘りが欠如しており、負けは当然の結果だったようにも思います。
この次の野口戦では明らかな勝勢を築きましたが、1Rの疲労がたまったことや、ミドルゲームでのポジションの理解力が乏しく、とんでもない大逆転負けを喫してしまいました。

連敗スタートで失意のまま2日目を迎えます。

2020年11月2日月曜日

Japan Chess Championship 2020 Round 6

 久々にブログを書きたくなりました。全て終わったらまた綴ろうとは思いますが、取りあえず今日のゲームをば。相手の方を直前に調べると、大学将棋部の後輩だということがわかりました。


Tokuni, S (JPN, 1800) - Nishino, T (JPN, 1905)
Japan Chess Championship 2020 (6)

1. g3 g6 2. Bg2 Bg7 3. c4 c5 4. Nc3 Nc6 5. e3 e6 6. Nge2 Nge7

最近は1.g3を主に指しています。e3-Nge2のセットアップは見慣れない形ですが、KIDを相手にしたときに通常のフィアンケット形に比べてfファイルを受けやすいと思っています。
下手をするとe3のマスが弱点になることや、黒マスビショップの働きが弱いことがデメリットです。

ただ、本譜のようにシンメトリカルな形を指したことはなく、すでに手探り状態です。

7. d4 cxd4 8. exd4 d5 9. cxd5 Nxd5 10. Nxd5 exd5 11. O-O O-O 12. Be3 Bg4 13. Re1 Re8 14. h3

白番の利点はすでに失われており、あまり自信はない局面です。ただ、ホテルに戻って調べてみると、Vachier Lagrave, M - Grischuk, A. (2017) で同一局面がヒットしました。黒は14...Bf5 と指してマイナーピースの働きの差を主張していますが、本譜も自然な流れだと思います。

14...Bxe2 15. Rxe2 Nxd4? [15...Bxd4= ですが、ビショップ対ナイトの差で白を持ちたいところです] 16. Rd2? [16.Bxd4 Rxe2 17.Bxg2+/- で単純なピースアップです。対局中はなぜかお互い見えていませんでした。]  16...Nf5 17. Bxd5 Nxe3?

17.Bxd5 のときにいろんな変化を考え、30分ほどつぎ込みました。本譜の17...Nxe3に代えて、17...Qe7など、クイーンをかわす手が正解ですが、すでに白がリードしている局面だと思います。

18. Bxf7+ Kxf7 19. Qb3+ [これで黒はクイーンを失います。Rd7+からのメイトスレットも存在しています。] Kf8 20. Rxd8 Raxd8 21. fxe3 Rxe3 22. Rf1+ 1-0

最後のお願いに対してルークでチェックをかけ、黒がここで投了しました。(22.Qxe3? Bd4)

個人的には4回目のOTBの大会です。どの参加者もレベルが高く、とても刺激を受けているところです。

2020年6月13日土曜日

Pirc Kholmov System


オンラインのBlitz(3+2)トーナメントで2400overに教わる機会を得た。
普段は対局を断られるレーティング差であっても、対局できるのはトーナメントならでは。

今振り返ると、c6-b5-a6 の構想があまりにもひどい。
ルークで中央を制圧されたあげく、13...c5 くらいしかないところに14.Bd5ではやることがない。
このvariationの白の方針はわかりやすい。ルークを中央に並べてロングキャスリングを目指しているので、クイーンサイドのポーンを伸ばすことを意識したい。さらに...Rxg7はあるところだし、ダブルポーンを作っても...Be6でビショップ交換を挑むことも必要。

2020年6月7日日曜日

rook ending

10+5で格上と。
ワンポーンアップの有利なエンドゲーム。K,R,Pの位置は申し分なし。


34... Kg6?!
ここでは34...Kg5で勝勢。35.Rxh7 Rxa2 で強力なパスポーンができる。

35. h4 h6 36. Rb5 f4 37. h5+ Kf6 38. Kf1 f3 39. Kg1 Rg2+ 40. Kf1 Rb2 41. Kg1 Ke7 42. Rb6 Rxa2



41... Ke7? 
41... Ke6! が正着で、Rをa5やb5のマス目から追いやることが狙い。
このエンドゲームの鍵はbポーンをパスポーンにして、それを維持すること。

42. Rb6 Rxa2 43. Rxh7?? b3

強力なパスポーンができたので黒勝ち。

2020年6月6日土曜日

チェス勉強法 (blunderの洗い出し)

自分のblunderの特徴を統計化/可視化することで、blunderを防止しようという試み

ゲーム後のself analysis/computer analysisにおいて、明確なblunderだと理解できたものについて下記の項目を記入する。エクセルなどでリストを作成するとまとめやすい。

・opening/middlegame/endgame
・what kind of piece
・in what kind of position
・offensive/defensive move
・why I played it
・how I evaluated the position
・why I did so
・best move I didn't find
・why it was best
(・second best move)
(・why)
・what I learned this time
・something else

このストックが溜まれば、そこから様々な課題を見つけられ、それを意識した研究ができる。

Japan Chess Championship 2020 Round 7

3.0/6.0pで最終日を迎えました。大会中の真鍋さんの棋譜を見ると、1.d4を指す緩急自在のプレイヤーという印象を受けました。目標の4.0pを目指し、激しいオープニングを選択します。 Manabe, H (JPN, 2039) - Tokuni, S (JPN, 1800) J...